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2016年9月 8日 (木)

【HT横浜関内店】 新型プロジェクターのキーワード「HLG方式」

HT横浜関内 渡邉です。

Kao_21

今回は長いです!要点は赤くしておきますので、お読みください。

IFA2016も一段落し、いよいよ国内各メーカーから新機種の発表が始まりました。

今年のモデルに関しては、パッと見はあまり変化がありません。 ただし、地味ですが去年のモデルから大きな変化がありました。

それは、HDRの新方式HLG「Hybrid Log Gammma(HLG)」方式へ対応しているという点です。

Hdr 今回のHLGを一言で表せば、「どのようにHDR映像を送るか」というアプローチから生じている新しい方式と言えます

現在「HDR」と呼ばれているシステムは正式には「HDR10方式」「PQ方式」と呼ばれます。 HDR10方式では、明と暗の差、輝度値を最大10,000nit・色深度12Bitまで規定し、送信ビデオ信号は0.01nitから10,000nitまでの絶対輝度(明るさ)で扱います。

当然、その性能をどこまで表現できるかという部分は、輝度という絶対値が決まっていますのでディスプレイ(表示装置)側にその性能を求めます。ピーク輝度に応じた変換が必要になることから、結果として各プロジェクターやテレビの性能次第でその表示はかなり異なります。

ここまでで「nit」という言葉が出て来て「なにこれ?」という方も多いかと思いますが 1nitは1cd(カンデラ)/平方m、つまり、1平方メートルの面積をムラなく1cdの明るさで光る輝度のことを言います。(1cd/m2=1nit[nt])平たく言えばスクリーンに反射した光の明るさということになります

Kansan ちなみにlm(ルーメン)は、投影面を縦3×横3の9分割にし、それぞれの面の平均照度(単位 ルクス(lx))に投影面の面積(単位 平方メートル(m2))をかけた値で表すことで光の収束度を示します。こちらも平たく言えば送信機器から発せられる純粋な光の量ということになります。このことから通常「lm」と「nit」は同一の尺度で測ることができません。

つまりこの段階でプロジェクターはサイズ可変しますので厳密な数字が出せなくなります。ただし、現行のプロジェクターはHDRの基準は確保しており、現行のUHD-BDでも最大輝度はだいたい2,000nit程度であるため、暗室にする(0.05nit)などの条件があればよほどのサイズ(ここ重要です)でもない限り光量に問題はありません。

今回のHLG方式は現状の機器の性能を見極めつつ、既存の放送との互換性を取ることを優先しています。HDR10方式との最大の違いは、輝度の扱いが真っ黒から基準白そしてピーク白までの相対値で表現されることです。

具体的には、SDRで言うところの真っ黒が「黒」真っ白が「基準白」(100nit)となり、HDRの領域は「それ以上」で扱われ、白ピークは「ピーク白」で扱われます。

Hlg_pq SDRの領域にHDRの領域を継ぎ足す形と言えばわかりやすいでしょうか。

なお、HLG方式の場合、現段階では1200nitから最大2000nit前後までの輝度値となります。色深度は10Bitとなります。

この方式を適用することにより既存のテレビと(100nitまでの表示として考える)の互換性を取り、生放送などリアルタイムが要求される環境や既存のSDRのテレビなどへも同一の放送波で送ることが可能になります。また「基準白」という言う基準が(ややこしいですが)が決まっておりますので運用基準はカメラ側になります。また、ピーク輝度は「基準白」にプラスしたディスプレイの性能次第ということになります。

まとめると

HLG方式の最大の利点は 「既存の放送方式との親和性と現状のテレビ・OLEDの表現領域に合わせたリアルタイムに向いたHDR表現方式」であり

HDR10(PQ)方式は 「既存の方式とは関係なく、理想の輝度を追求した方式、ただし表示機器の性能に依存し、パッケージメディアや配信など確定したファイル内でのHDR表現方式」となります。

このような書き方をするとHLG方式の性能が劣っているように見えますが、実際には現状の液晶の最大輝度が1000nit、OLEDが500nit程度であり、むしろ現実的です。余談ですが、液晶で7,000nitを実現しようとすると、東芝REGZAでリファレンスがありましたが、こうなります。なんと2000w。

7000nit

東芝が次世代REGZAで狙う“HDR時代の最高画質”の源

http://av.watch.impress.co.jp/docs/topic/721166.html 

また、去年のCESで発表されていたソニーの「Backlight Master Drive」で最大4000nitとなります。

Kj100z9d_floorstand こちらは、8月29日に発表された「BRAVIA Z9Dシリーズ」には採用されていますが、最大nitは非公開ですのでどのくらいあるのか・・・。内覧会で拝見した実機はほぼ有機EL並みのコントラストでした。かなり現行のUHD-BDの表現幅に近づくものと思われます。

ここまで長々と話してきましたが、お気づきの方は「結局HDRって全部表現しきれないということ?」という結論を出されるかと思います。

その通りです。

そもそも人間の目は0から20,000nitまで見分けられますので、今の所、色域はともかく液晶・OLED・プロジェクター、どんな機種でも見える輝度すべてを表示しきれないのが現状です。

現行「HDR」と言われているものは最大でも4,000nit程度の「元素材」と言われています。

ここまでが液晶・OLEDの輝度最大値になると考えていいかと思います。やろうと思えば先ほどのように7000nitも可能ですが、まだ先でしょうね。

逆に言えばHDR10方式は性能が表示機器の性能が上がれば上がるほど輝度は増します。 理論上はプロジェクターのルーメン(Im)数が上がればnitも上がりますので(もちろんコントラストも必要になります。)

今回発表されたJVCのDLA-Z1は3000lm

Jvcdlaz1 ソニーのVPL-VW5000は5000lm

Vplvw5000es_2 の光束を誇っておりますので、HDRの表現能力を出し切る方向性を示しています。

またVPL-VW535がコントラスト比を上げたことも、こちらが理由と考えられます。

Vplvw535_white HDRはもともとテレビの性能が上がったことから制定が始まりました。しかし設定した幅が広いことから逆にプロジェクターに可能性が動いてきた形になります。今後が楽しみです。

ともあれ年末にかけた新商品がそろい始めました。

当店の展示も順次変化しますが、発売後、DLA-Z1、VPL-VW5000はそれぞれ視聴のご希望を頂き、視聴後購入の前提でご用意の交渉を行う形になるかと思います。

また、設置方法も「レンズを覗き込んでしまう事=目に障害が残りかねない」となりますので、設置位置を考えなくてはなりません。インストーラーを交えたお話になるかと思います。 イベントで来るかどうか・・・・現段階では何とも言えないところです。

また、「HLG方式が付いた機種を買う方がいいか?」という質問が出るかと思います。

回答としては、BS-4Kを考えた場合はあったほうがいいかと思います。CSスカパー4KもHLG方式の模様です。

今までのHDR製品の展開から、レコーダーなどの機器で変換することが予想されますが、本体側の号受信能力はあったほうがいいかと思います。

余談ですが、VPL-VW5000の内覧でご厚意により手持ちのUHD-BD「バットマンvsスーパーマン」を流させていただきました。 店舗の機種でも十分だと思いましたが、スーパーマンにとどめを刺しかけるところで、クリプトンの槍が見ていられないほどの光を放ちました。 (写真はDLA-X750Rの物です。)

Imag4139

Imag4141 「これがホントのHDRなんだなあ」と明るさがあれば、HDRはさらに真価を発揮できるものだと痛感しました。そういう意味では今回の新機種は妥当な進化だと思います。

ご購入のお考えの方はご相談を。買って損はないかと思います。

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