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2013年11月25日 (月)

【大阪梅田店】『デジタル時代のホームシアター近代史:第7章 Victor DLA-HD1によるコントラスト革命とついにベールを脱いだブルーレイロスレス音声!!』

ややマンネリ感の出てきた当シリーズですが、今回のは結構出来が良いと思っている渡部です。

Watanabe_180_188

【第6章】は次世代フォーマット(BD Video、HD DVD-Video)が徐々に発売され、フルHD時代が本格的に始まった2006年を書きましたが、【第7章】の舞台になる2007年は、ホームシアターの画質と音質が一気に向上するエポックメイキングな年でした。

まず紹介しなければならないのは、年が明けて発売されたVictorのフルHD D-ILAプロジェクターDLA-HD1です。

Dlahd1Victor DLA-HD1

このモデルを抜きに2007年は語れません。

タイトルにも「コントラスト革命」(私が勝手に呼んでます)と書きましたが、DLA-HD1の映像を初めて見た時は、まさにそんな印象でした。

プロジェクターのコントラストは、それまで毎年1歩1歩進化していました。

それが、DLA-HD1の登場により、一気に2、3歩飛び越えてしまった感じです。

10年以上のD-ILAの開発で実現された圧倒的なネイティブコントラスト15000:1は、それほどインパクトのあるものでした。

以前のプロジェクターでコントラストを出そうとすると、アイリスを絞る必要があるので、黒は沈んでいきますが、同時に白のピークも落ちて暗くなってしまいます。

DLA-HD1が画期的だったのは、眩しい程の白漆黒の黒を同時に映すことが出来たことです。

このモデルの登場により、ホームシアターにおけるコントラストの基準が大幅に上がると共に、コントラストが凄いD-ILAという認識が広まり、それは現在まで続いています。

他のメーカーは、このコントラストを目標に、これ以降のプロジェクター開発に取り組むことになりますが、それがプロジェクター全体の画質レベルの向上に繋がることになります。

もちろん、その中心に居たDLA-HD1は、生産が追いつかないほどの大ヒットになりました。

映像面では、このDLA-HD1によるプロジェクターのコントラストレベルの向上が一番のトピックスですが、音声面での大きな動きとして、ブルーレイとHD DVDのロスレス音声対応が本格的に始まります。

ブルーレイプレーヤー1号機と呼んでいいのか分かりませんが、SHARPから録画もできるブルーレイプレーヤーBD-HP1が発売されます。

Bdhp1SHARP BD-HP1

チューナーやHDDは非搭載で、録画はi-Link経由でブルーレイに直接という仕様です。

ロスレス音声も、Dolby TureHDは2ch、DTS-HDはコア部分のみという仕様で、中途半端感が残ります。

その少し後に発売されたPioneerのBDP-LX70が、本格的なブルーレイプレーヤーの第1号だと思います。

Bdplx70Pioneer BDP-LX70

このモデルで初めて可能になったのが、今では当たり前になった1080/24pダイレクト出力です。

【第4章】のフレーム等倍の項で若干書かせていただきましたが、ようやく1秒間60コマという呪縛から解き放たれ、映画(24コマ)本来の質感を享受することができるようになりました。 

ただ、ある程度の経験が無いとこの違いに気付く方は少ないかもしれません。

個人的な感想では、プラズマディスプレイは表示方式の問題なのか60pと24Pの違いをあまり実感できず、プロジェクター(特にD-ILAやSXRD)の方が恩恵が大きいと感じました。

そして、ロスレス対応も1歩前進します。

BDP-LX70は、DOLBY TrueHDデコーダーを搭載し、リニアPCM変換出力が可能になりました。

残念ながらDTS-HD Master Audioはコア部分(DTS5.1)までですが、今まで聴くことのできなかった次世代音声フォーマットのクオリティーを垣間見ることができました。

なかなか一足飛びには行かないロスレス音声の対応ですが、初のロスレス音声対応AVアンプTX-SA805と、ロスレス音声のビットストリーム出力対応ブルーレイプレーヤーBDP-LX80の登場で、ようやくすべての次世代音声フォーマットを堪能することが出来るようになりました。

Txsa805ONKYO TX-SA805 

Bdplx80Pioneer BDP-LX80

ここで、ロスレス音声について簡単に説明させていただきます。

DVDで使われていたDOLBY DIGTALやDTSはロッシー圧縮(非可逆圧縮)と呼ばれ、データを圧縮したら可聴帯域外の音声信号がカットされ、元のデータと同じには戻らず音質劣化が生じます(MP3やAACなどもこの一種です)。

DOLBY TrueHDやDTS-HD Master Audioなどのロスレス圧縮(可逆圧縮)は、データ圧縮後も元のデータと同じに戻すことが可能です。

FLACやアップルロスレスもこの仲間ですので、音質的な優位性はご理解いただけると思います。

さらに、元データにハイレゾ(48kHz/24bit~192kHz/24bit)を使うことができるので、そのポテンシャルはDVDとは比べ物になりません。

つまりブルーレイというのは、映像がフルHDで音声がハイレゾというパッケージソフトと言えます。

その後、ブルーレイレコーダーもロスレスのビットストリーム出力対応モデルが続々発売されます。
Dmrbw900
Panasonic DMR-BW900

高画質の代名詞的システムLSI「UniPhier(ユニフィエ)」がDMR-BW900に初搭載されます。

Bdzx90SONY BDZ-X90

SONYも、現在のリアリティークリエーションの前身ともいえる高性能LSI「DRC-MFv2.5」をBDZ-X90に搭載。 

Bdhdw20SHARP BD-HDW20

この世代のレコーダーから、MPEG4AVC/H.264エンコーダーによるハイビジョン長時間録画機能も搭載され、一段と現在のレコーダーに近づきます。

また、HDMIもVer1.3になり、Deep Colorにも対応が始まります。

次世代音声フォーマットのような大きな動きがあると、AVアンプの新製品が続々発売されるのは常で、2007年もハイエンドAVアンプの名機が続々登場します。

最新のCX-A5000にも搭載している11.2chの「シネマDSP HD³」を初搭載した、YAMAHAのDSP-Z11もその1台です。

Dspz11YAMAHA DSP-Z11 

先行して発売されたDSP-AX3800に搭載の「3DシネマDSP」に、リアプレゼンススピーカーを追加した11.2chで再現する「シネマDSP HD³」は、ロスレス音声との相乗効果もあって、これがシネマDSPの完成形と思える圧倒的な立体音響でした。

同じく高さ方向の音場表現を可能にする「ドルビープロロジックIIz」に先行すること約2年、今だからこそYAMAHAのシネマDSPの先進性を痛感します。

また、この筐体がMX-A5000のベースになったのは有名です。

2007年で忘れてならないのは、Pioneerの伝説のプラズマディスプレイKUROの第1世代機PDP-6010HD/5010HDでしょう。

Pdp5010hdPioneer PDP-5010HD

プラズマは、予備放電という種火を常に灯しておく必要があり、それが黒浮きの原因になりますが、PDP-6010HD/5010HDでは黒輝度を前モデルの1/5に抑え、20000:1というコントラストを実現しました。

その名の通り「黒」の表現力の向上に伴って、画質全域に渡って性能が向上したことにより、従来のモニター調の画作りも凄みを増しました。

KURO同様に驚異的な「黒」を表現するモデルDLA-HD1で幕を開けたプロジェクターですが、その影響は年末発売のモデルに色濃く現れていました。

MITSUBISHIの新型液晶プロジェクターLVP-HC6000“黒再現力の強化”をテーマに開発されたのも、無関係ではないと思います。

Lvphc6000MITSUBISHI LVP-HC6000

黒を重視する為に、最新のD7パネルではなく敢えてD6パネルを使ったと伺った記憶があります。

やや明るさが印象的だった前モデルとは打って変わって、黒を重視した落ち着いた画作りは、従来のMITSUBISHIトーンに戻った印象です。

前モデルで動作の遅れが気になったオートアイリスも、高速応答・高精度になって完成度が上がりました。

フルHD液晶の2世代目で一気に完成の域に持ってきたのは、流石プロジェクターを知りつくしたMITSUBISHIです。

本家EPSONは、最新のD7パネルを搭載したEMP-TW2000で、脅威のコントラスト比50000:1を実現しました。

Emptw2000EPSON EMP-TW2000

開口率が20%向上したかわりに黒が出しづらいと言われたD7パネルでこれだけの黒が出せるのは、コントラストを損失させる原因となる“楕円偏光”を低減させる「DEEPBLACK」テクノロジーによるものです。

オートアイリスを使った50000:1という数字よりも、オートアイリスをoffにして実際の映像を見たときのネイティブの黒に驚きました。

その映像で、「本当はオートアイリスなんか要らない」と、EPSON開発陣に言われているような気がしました。

コントラストだけでなく、色やガンマなども細かな修正が入り、前モデルよりも格段に完成度を高めたEMP-TW2000は、個人的にはEPSONのフルHDプロジェクターの中で一番好きなモデルです。

そのほかD7パネル搭載機として、PanasonicのTH-AE2000と、SANYO初のフルHDプロジェクターLP-Z2000がありました。

Thae2000Panasonic TH-AE2000

Lpz2000SANYO LP-Z2000

marantzのフルHD DLPプロジェクター2号機VP-15S1も、DLA-HD1から始まったハイコントラストな映像の流れに、少なからず影響を受けた1台だと思います。

Vp15s1marantz VP-15S1

従来のレンズ内に加え、ランプ側にもアイリスを搭載したデュアルアイリスにより、コントラスト比10000:1を実現しました。

マランツ従来の画作りを踏襲しつつも、やや力強さを増した白ピークに、時代の流れを感じます。

DLP最高画質の1台でありながらLCOS勢の陰に隠れてしまった感があり、marantzプロジェクター最後のモデルとなってしまったのは残念なところです。

SONYのSXRDプロジェクターも、強力な2台を発売します。

VPL-VW60は、SXRDパネルのさらなるチューンナップと「アドバンスト・アイリス2」「ハイコントラストプレート」等により、35000:1というコントラスト比を実現しながら大幅な値下げを行い、SXRDをさらに身近な存在にしてくれました。

Vplvw60SONY VPL-VW60

フラッグシップモデルのVPL-VW200も、35000:1のコントラストと共に大幅に進化しました。

Vplvw200SONY VPL-VW200

大きく変わったのは、120Hz駆動を実現する「0.61型ハイフレームレート フルHD SXRD」と、動画応答改善技術「モーションフロー」の搭載です。

「モーションフロー」は、中間フレームを生成する「モーションエンハンサー」と黒挿入の「フィルムプロジェクション」という2つの技術からなります。

いまでは当たり前のようになったフレーム補完も、プロジェクターではVPL-VW200から搭載が始まりました。

クオリア譲りの「Carl Zeiss Vario-Tessarレンズ」の採用や、フルデジタル高画質回路「ブラビアエンジンプロ」の搭載などによる画質アップも大きいです。

VPL-VW100では非対応だった24p再生に対応したことも、ユーザーには嬉しいところです。

これらの技術やチューンナップされたSXRDパネルの効果で、同じキセノンランプながらVPL-VW100で感じられた暗さや白ピーク感の弱さが改善され、この時点でのSONYプロジェクター史上最高画質と呼んでも過言ではありません。

このように他のメーカーから追われる立場になったVictorも、さらなる高画質を目指したDLA-HD100を発売します。

Dlahd100Victor DLA-HD100

「0.7インチフルハイビジョンD-ILAデバイス」の平坦化技術を向上させ黒輝度を大幅に低減し、光学エンジン「ワイヤーグリッド」の偏光精度を向上させ光漏れを極限まで抑えたことにより、ネイティブコントラストは脅威の30000:1に到達しました。

アイリスを一切使わないでこのコントラストを叩き出すDLA-HD100の黒は、追いついてきた他のモデルとの差をさらに広げ、あのDLA-HD1を過去のものにしてしまうほどでした。

DLA-HD1で指摘された色の正確性の改善も行われ、「色フィルター」により特に赤の再現力が向上し、トマトや夕日などの赤がリアルに変わりました。

その為、DLA-HD1に比べやや輝度は落ちましたが、明るすぎていたのが収まった感じで、よりウェルバランスになったと思います。

2007年は、Victorで始まりVictorで終わった印象でした。

また、こうして見てくると、AV機器の黒筐体ブームが、この年発売されたKUROを始めとするPioneer製品から始まった事が分かります。

続く【第8章】では、さらに充実するブルーレイプレーヤーと、撤退を発表するHD DVDという、メディア競争の明暗が分かれる2008年を書きます。

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