【大阪梅田店】短期集中連載『デジタル時代のホームシアター近代史:序章』
半沢直樹の9話と最終話はちょっと納得できない渡部です(でも面白かったですが)。
今回から『デジタル時代のホームシアター近代史』というのを連載で書いてみたいと思います。ブログもいろいろ書いてきましたが、ここまでの長編は初めての挑戦です
アバックグループCSCのホームページにも『ホームシアターの歴史』というのがありますので、もっと以前の話やホームシアター全般のことはそちらをご参照ください。
若干内容が被りますが、こちらはもっと『機材』中心の話になります。
各メーカーの最新プロジェクターが発売を控えているこの時期に、プロジェクターを中心に、ちょくちょく脱線をしながら、今までのホームシアターの流れをもう一度振り返ってみようと思います。
なぜかといいますと、機材の歴史を知ることで、これからのホームシアター生活がもっと楽しくなるのではないかと思ったからです(大きなお世話かもしれませんが)。
たとえば、私の好きな格闘技をはじめ、野球、サッカーなども、歴史を知っていればさらに楽しむことができます。それまでの流れを知れば、単なる試合がドラマ性を持ち、試合前の期待度や終わった後の感激はより一層高まります。
ホームシアターでも、技術や性能の発展の歴史を知ることにより、現在の画質・音質や機能のありがたみを実感し、機器への思い入れが強くなると思います。
ホームシアターを始めたばかりやこれから始めようと思っている方には、「過去にそんなことがあったのか」と新鮮に感じていただき、「そんなこと知っているよ」というキャリアの長い方には、「そんなこともあったな」と懐かしんでいただければ幸いです
また、出来るだけ当時の事が現在にどう繋がっているのかを意識して書いてみたいと思います。
若干記憶が曖昧な所もありますので、間違っている点がありましたらお手柔らかにご指摘ください
本編では、DVDが急激に普及しだしBSデジタル放送が開始された2000年辺りから始めていきたいと思いますが、今回の【序章】ではそれ以前のホームシアターの状況を簡単に紹介したいと思います。
1999年以前のプロジェクターはどんな感じだったでしょうか。
熟成の域に達した3管式プロジェクターは画質で他のデバイスを圧倒していましたが、高額で筐体も大きかった為、まだまだ一般的に普及しているとは言いがたく、専門的な調整が必要になるなど、今以上に趣味性の高い機器でした。
BARCO VISION 708MM 定価¥1,890,000
液晶プロジェクターも既にありましたが、まだまだ完成度は低く、3管式プロジェクターとの画質差はかなり大きくありました。
プロジェクターが普及する為には、コンパクトで高画質なモデルの登場が求められておりましたが、その辺りの話は後半に引き継いで、一旦それ以外のカテゴリーを紹介したいと思います。
1996年にDVDが登場する以前のホームシアターでの映像メディアの中心は、LD(レーザーディスク)でした。
1993年にはアナログハイビジョン視聴に必要なMUSEデコーダーを使った、Hi-Vision LDプレーヤーが登場します。
対応ソフトはそれほど多くなかったと思います。
末期にはLDにもドルビーデジタル(AC-3)やDTS収録のソフトが製作され、それに伴い対応のAVアンプも発売されました。
YAMAHA DSP-A3090 ドルビーデジタル(AC-3)に初めて対応
AC-3にはRFデモジュレーターもしくは内蔵AVアンプが必要で、DTSとは出力・入力端子が違うなど、今と比べると使い勝手やスマートさに欠けた仕様でしたが、ここから現在のホームシアターに繋がるディスクリート収録のサラウンド再生が始まります。
しかしDVDの勢いには勝てず、超弩級LDプレーヤーHLD-X0を頂点に、徐々に映像メディアの中心はDVDに移っていきます。
この時期にはLDとDVDのコンパチブル再生機などもありました。
また、高画質エアチェック派はS-VHSを使っていましたが、この頃はまだ高級機も残っていました。 Victor HR-X7
GRT(ゴーストリダクションチューナー)、デジタルTBC、3次元Y/C分離など、懐かしい高画質技術満載です。
LDプレーヤーからコンポジット出力でS-VHSデッキに入力し、S-VHSデッキのY/C分離回路を使ってS出力することで、画質を向上させるという上級テクニックもありました。
アナログハイビジョンをMUSEデコーダー経由でハイビジョン録画できるW-VHSが登場して、ビデオデッキによる高画質アナログ録画も頂点を迎えます。
今は電子番組表から簡単に選択してブルーレイにハイビジョン録画できますが、この当時はハイビジョン番組も少なく、録画も大変でした。しかもW-VHSテープは1本約¥3,000と高額で頭出しにも時間が掛かります。
しかし、この堂々とした筐体は高級感があり、今よりも機器に対する愛情もハイビジョン映像に対する憧れも大きく、幸せな時期だったかもしれません(恵まれすぎると失う物もありますね)。
BSデジタル放送開始の1年前、1999年の後半になると、オーディオ&ビジュアル界に、今後の大きな流れを作る重要なモデルが続々発売します。
DVDプレーヤーでは、初のプログレッシブ出力対応のDVD-H1000がパナソニックから発売されます。
ここで、プログレッシブについて若干説明します(分かっている方は飛ばしてください)。
これ以前のDVDプレーヤーはインターレースという方式で映像出力をしていました。
日本のテレビ放送規格NTSCの走査線525本によるインターレースで、当時は「525i」と呼称されていました。
あれ?480iじゃないの?と思う方もいらっしゃると思いますが、どちらも同じです。
525はNTSCの総走査線数で、480は有効走査線数です(3管式やブラウン管テレビがあった時代は、総走査線で表すこともありましたが、今はほとんどありません)。
インターレースとは走査線の奇数列と偶数列を交互に表示する方式です。
そのためチラつきがあったり、走査線の隙間が見えたりする欠点があります。
プログレッシブは、奇数列と偶数列を同時にフレーム表示して、インターレースの欠点を無くし画質を向上させます。
ちなみにDVDのプログレッシブは525Pもしくは480Pと呼称します。
個人的にプログレッシブ出力は、24コマ収録の映画に効果的だと思います。
同様に、3管式プロジェクターで大画面投影をするとやはり走査線が目立ってしまうので、480Pにするラインダブラーや、4倍の960Pにするクアドラプラーなどのビデオプロセッサーを使い、高画質化を目指すユーザーもいました。
DVD-Audioの著作権保護対策の関係で、プログレッシブ搭載機としてはDVD-H1000に先を越されてしまいましたが、初のDVD-Audio対応ユニバーサルプレーヤーDV-AX10も若干遅れて発売になります。
SACDは確かリニアPCM変換だったと思いますが、それでも初のDVDユニバーサルプレーヤーに相応しい名機だと思います。
重さも24Kgと、プレーヤーとしては超重量級ですが、その分ボディーの剛性はエソテリックも真っ青な程です
初のDVDレコーダーPioneerのDVR-1000もこの頃発売になります。
まだ、DVD-RWにVRモードでしか録画する事が出来ませんでしたが、ディスクに映像を録画するという夢を実現してくれました。
レコーダーの発展も今後追いかけてみたいと思います。
AVアンプでは、THX SURROUND EXという7.1ch(音声信号は6.1ch)音声対応のアンプも登場し、更なる多チャンネル化の流れが生まれます。
DENON AVC-A10SE THX SURROUND EXデコーダー初搭載
スターウォーズ エピソード1 ファントム・メナス(ドルビーデジタル・サラウンドEX対応LD)
だいぶ横道に逸れてしまいましたが、本筋のプロジェクターにも重要なモデルが登場します
SONYの液晶プロジェクターVPL-VW10HTです
それまでの液晶パネルの解像度を大きく上回る、高解像度ワイドLCDパネル(1366×768)を搭載した次世代の液晶プロジェクターの登場です
当時としてはコンパクトでお手ごろ価格、将来のデジタルハイビジョン放送を見据えた1125i(1080i)入力対応ワイドパネルで、もちろんプログレッシブ入力可能と、当時のユーザーのニーズに応え、売れる要素満載です。
もちろん大ヒットしまして、生産が追いつかないほどでした。
ここからプロジェクターの普及は加速していきます
3管プロジェクター勢も、SONYのドルフィン最終モデルVPL-D50HTJ MK2や、BARCO CINE8、CINE7等、続々新商品が登場し、高画質プロジェクターの座に君臨していました。
そして、国産3管式プロジェクター最後のヒットモデルMITSUBISHIのLVP-2001が登場します
3管式プロジェクターを身近にしてくれ、多くのユーザーにその魅力を伝えてくれました。
いまだに現役で愛用されている方もいるかもしれません。
【序章】と言いながら結構な長さになってしまいましたが、次回からいよいよ2000年に突入し、BSデジタル放送も開始され、ホームシアター業界もさらなる活況を呈します
それでは次回【第一章】をご期待ください